奨学生 感想文

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劉 俊薇(リュウ シュンビ)
中国出身/2024年度奨学生
東京外国語大学 総合国際学研究科 博士前期課程

『義経千本桜』河連法眼館の場、歌舞伎鑑賞の感想 

 7月一週目の日曜日、坂口財団の皆様と一緒に歌舞伎の演目『義経千本桜』を鑑賞する機会に恵まれました。今回の歌舞伎鑑賞は私にとって初めての経験であり、日本の伝統芸能に対する理解を深める貴重なひとときとなりました。 鑑賞に先立ち、歌舞伎の基本的な用語や観劇の常識についての説明がありました。歌舞伎は、伝統的な日本の演劇形式であり、その歴史や背景について学ぶことは非常に興味深かったです。舞台上での役者の動きや衣装、音楽、舞台装置など、すべてが一体となって一つの物語を紡ぎ出す様子を事前に知っておくことで、実際の観劇がより深く楽しめるものとなりました。

 『義経千本桜』は、源義経の逃亡とその追跡を描いた名作であり、その複雑なプロットと多彩なキャラクターが魅力的です。今回の物語は、不思議な力を持つ狐を通じて普遍的な親子の情愛が描かれました。舞台が始まると、まずその華やかさに圧倒されました。役者たちの華麗な衣装と、色鮮やかな舞台美術が目を引きました。特に、義経役の役者の演技は圧巻で、その力強さと繊細さが見事に表現されていました。また、静御前役の女形の美しさと優雅さにも心を奪われました。女形の細やかな仕草や表情が、女性の美しさを余すところなく表現しており、まるで本物の女性がそこにいるかのような錯覚に陥りました。演技だけでなく、音楽や効果音も歌舞伎の魅力の一つです。三味線や太鼓の音色が物語の進行に合わせて変化し、場面の緊張感や感動を一層引き立てていました。特に印象的だったのは、義経が逃亡する場面での音楽で、その緊迫感が観客に直接伝わってきました。また、舞台上の役者たちのセリフ回しや歌唱も素晴らしく、その独特なリズムと抑揚が物語の深みを増していました。

 初めての歌舞伎鑑賞を通じて、日本の伝統芸能の奥深さとその魅力を存分に味わうことができました。『義経千本桜』という名作を通じて、古典文学と舞台芸術の融合を体験し、その独特な美しさと感動を心に刻むことができました。坂口財団の皆様に感謝するとともに、今後も歌舞伎をはじめとする日本の伝統文化に触れる機会を大切にしていきたいと思います。