奨学生 感想文

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閆 家欣(エンカキン)
中国出身/2023年度奨学生
日本女子大学 人間社会学部 教育学科

『日本振袖始  ―八岐大蛇と素戔嗚尊―』歌舞伎への感想

 6月に国立劇場で行った『日本振袖始  ―八岐大蛇と素戔嗚尊―』という歌舞伎鑑賞教室はシンプルで内容的に分かりやすかった。鑑賞教室なので、フォーマル的な演出が始まる前に役者の中村虎之介ともう一人の若者からの解説があった。現代的なBGMに伴い、自動回転式のお台から虎之介が降りてきた。その瞬間、舞台劇を観に来てたのかという錯覚が起こった。このような視覚に新鮮感を当たって頂いたオープンニングは私にとって魅力的な一環だと思う。そして、歌舞伎舞台の紹介、「大立ち廻り」、「口説き」など歌舞伎に関する専門用語、歌舞伎俳優の見どころなどの説明、演目内容に関わるクイズとかも幾つかがあった。また、今回は中村扇雀、中村虎之介親子が共演するため、メリハリのある作品で、堪能できた。
 この演目は、出雲国という所(現在の島根県)で、日本の伝統神話に登場し、岩長姫の姿と八つの頭を持っている大蛇の正体で現れた八岐大蛇が恋人の稲田姫を救いに来るための素戔嗚尊に退治された話だった。この中、霊の岩長姫の姿で出場した八岐大蛇の毒入りのお酒を飲んで、酔っ払ってしまって、過去の自分の遭遇を頭に浮かべ、魂が抜けたような振りに惹き込まれた。その時、彼女の心の底から生じられた悲しみ、妄執、怨念が強く感じた。悪魔的な存在だけど、そうなってた理由がある。勿論私も八岐大蛇が沢山の人を殺したことに非常に憎い。「でも、理由がある」という誰も知らない八岐大蛇の心の独白を当時、誰かが読み取れて助けて上げれば、それらの暗闇が少しでも消えてできそうじゃないかと思う。