奨学生 レポート

外国人奨学生の顔写真

エルガシェウ・シャフゾド
タジキスタン出身/2022年度奨学生
東京外国語大学 総合国際学研究科 修士課程修了

留学生から社会人へ ――挑戦と成長の日本生活

 大学生のとき、日本への留学は自分にとって最も大きな目標の一つであった。日本語の力をもっと伸ばし、将来は大学院に進学して言語の研究を行いたいと考えていた。そして、その研究が日本語を学ぶタジキスタンの人々に役立つものになればと思っていた。2019年、ようやくその夢がかない、日本に来ることができた。

 来日当初は、日本での生活に慣れるのが非常に大変であった。言語の違い、文化の違い、生活のリズムの違いなど、すべてが新しく、毎日が挑戦の連続であった。しかし、少しずつ日本の環境に慣れていき、気がつけば、日本での生活を楽しめるようになっていた。
 留学生活では、楽しいこともあれば困難なことも多かった。日本人の優しさや、真面目に働く姿勢に感動した一方で、文化の違いに戸惑う場面も少なくなかった。それでも、そうした経験はすべて、自分にとってかけがえのない思い出となり、人生の宝物となっている。

 大学院を卒業した現在は、日本国内の人材派遣会社で社会人として働いている。最初はアルバイトとして業務を始めたが、努力を重ねた結果、現在では正社員として営業や人材コーディネーターの仕事を任されるようになった。

 以前はホテルのフロント業務に従事していたため、現在の仕事内容とは大きく異なっている。特に外国人留学生との関わりが多く、さまざまな国の人々とコミュニケーションを取る機会が多いことに、大きなやりがいを感じている。ただし、学生時代のアルバイトとは異なり、現在は責任が重く、日々忙しさを感じることもある。

 中でも最も難しいと感じているのは、外国人留学生を採用する際の判断である。日本の職場文化を十分に理解していない応募者や、勤務時間を守れない人も少なくない。そのため、採用の際には、その人の性格や態度、日本で働く意欲などを総合的に見て判断するように心がけている。ときに は悩むこともあるが、これも自分にとって貴重な学びの機会であると捉えている。

 タジキスタンで働いた経験はないため、現地の職場文化やルールについては直接的な知識はない。しかし、日本の職場においては、「丁寧に教える文化」や「チームで協力する雰囲気」が根付いていると強く感じている。わからないことがあっても、先輩たちは親切に教えてくれ、一緒に働く仲間たちとの信頼関係が築かれる職場環境には大変感謝している。

 また、日本では年齢に関係なく、努力次第でキャリアアップできる機会が多く存在している。そのような環境の中で働くことによって、自分自身のやる気も自然と高まった。現在では、コミュニケーション能力も少しずつ向上し、自分の意見をきちんと伝えることができるようになっている。
 さらに、2025年5月には第二子となる娘が誕生した。社会人としての生活が始まったばかりの時期に家族が増えたことは、自分にとって大きな喜びであり、人生の中でも特に印象深い出来事となった。学生時代は自由な時間が多く、いつでも帰国できたが、社会人になると時間的な余裕がなくなり、自由に動くことが難しくなったと強く感じている。これこそが、学生と社会人との最も大きな違いかもしれない。

 今後も社会人としての責任を果たしながら、自分の目標を忘れず、努力を続けていきたいと考えている。将来的には、タジキスタンにおける日本語教育にも関わり、日本語を学ぶ若者たちの支援ができるような存在になることを目指している。また、近い将来には家族を日本に呼び寄せ、共に生活できるよう準備を進めているところである。家族のため、そして自らの夢のために、これからも一歩一歩成長を続けていくつもりである。

202410_同窓生エッセイ_エルガシェウ・シャフゾド