松宮 陽輔
2023~2025年度奨学生
オックスフォード大学 博士課程 医学部
「国際化とジェンダー平等」:私の経験と意見
国際化、国際戦略、グローバル化、更にジェンダー平等や男女同権。最近よく耳にする言葉です。ケンブリッジ大学医学部当時、その後医師として複数の病院で働き、現在オックスフォード大学で研究を行いながら、男女関係なく、色々な人種の方と働くのが当たり前でした。しかし他の大学、国や社会では、そうではない場所が多数あります。振り返ってみれば、私が日本の大学で働いていた当時も医学部の生徒の大半が男性、そして外国籍を持っている生徒は数百人の中、2人しか覚えていません。もちろん言語の違い、特に医学部では国家試験を日本語で受ける必要があるので、簡単に解決する問題ではありません。
日本の文部科学省は大学の研究力強化に向けて2014年度から2023年度まで「スーパーグローバル大学創成支援」、そして最近「国際卓越研究大学制度」を実行しています。各大学は国際戦略に向けて頑張っていますが、私の経験と意見ではいくつか重要なポイントがあります:
① 学生よりも、まずは教員だけでなく事務員を含めたスタッフが国際的である事。
② 全てのやり取りを英語で行う。Homepageのデフォルトも英語。
③ ビザや住居を手配してくれる担当者がいる。
外国人としては上記が整っていると、その大学に応募しやすいかと感じます。現在日本で学んでいる坂口財団の外国人奨学生の意見も是非伺いたいです。
ジェンダー平等はこのレポートだけでは収まらない課題ですが、大学だけの問題ではなく、文化と社会の影響でもあります。
2018年に東京医科大で女性に不利な点数調査が行われていたと発覚され、ちょうど私も日本で働いていた時だったので、自分が勤務していた大学でも少し調査してみました。
大学の医学部には各学年約100人に男性70人:女性30人。見た目では女性差別と思われます。しかし、受験者が1000人いたとして、男性が700人:女性300人で同じ合格者の割合だとしましたら、女性差別になりますでしょうか?
特にSTEM(Science, technology, engineering, mathematics)の科目では、英国を含め、国際的に女性の方が少ない事は自実です。しかし、何故でしょう?私の経験と調査では:
➀ Unconscious bias
小さい頃から理数系が得意な男の子に対しては「将来、医者や科学者になれる」と言うような発言が多いかもしれないですが、同じように女の子が得意でも「看護師や学校の先生」と無意識に発言をしてしまう先生や大人がいます。おもちゃ屋さんに行って、男の子用には車や恐竜があって、女の子用にはバービーや美容系の物に分かれているのも、無意識に将来の職業や選択の考え方に繋がってしまいます。
➁ Career progression and support
女性として理数系や医療関係の仕事に就いたとしても、キャリアを積むのが難しい社会が存在します。育児休業に関しては、以前のレポートに執筆しました。
➂ Leaders and role models
女性としてリーダーのポジション、特に理数系、に就いて指導している方が少ない。私が日本で働いていた当時、ある大学の教授会の9割は男性でした。
ジェンダー平等に関して私が学部生として所属していたChurchill College, Cambridgeの現寮長のAthene Donald教授が去年、”Not Just For The Boys: Why we need more Women in Science”と言う本を出版しました。
https://www.amazon.com/Not-Just-Boys-Women-Science-ebook/dp/B0C2ZNL1D2
イギリスの大学や部署ではAthena Swanと言うジェンダー平等の評価を示す制度があります。特に研究費の申請をする際には大学の部署の評価を申告する必要があります。
https://www.advance-he.ac.uk/equality-charters/athena-swan-charter
Times Higher Educationの世界大学ランキングで日本と英国のトップ大学を比べると、外国人学生と男女の割合の違いが明らかに分かります。
(英国)
(日本)
もちろん順位を上げるのは単純ではないですが、もしも日本の大学が本当に世界での順位を上げたいのであれば、外国人の女性生徒と職員(できるだけシニアな職位)を集める事を一つの戦略として検討してほしいと感じます。
ケンブリッジ医学部解剖学のグループ
国籍はドイツ、スリランカ、インド、中国、イギリス、日本
私が現在所属しているBalliol Collegeの寮長は女性で、研究室の半数以上は女性、そして国籍豊かです。坂口財団も奨学生の半数は外国人で半数以上は女性、そして代表理事の蜂谷様が女性である事は、日本社会だけでなく、国際的にも素晴らしい前例で、そのファミリーの一員である事を非常に誇りに思っています。