マージョリー・ミュレール
フランス出身/2023年度奨学生
上智大学 地球環境学研究科 博士前期課程
留学して学んだこと
初めて日本に留学することを決めたのは、フランスで生活し続ければ成長が限られて、当時以上のものを得られないと思ったからです。振り返ってみると、日本に来て正しい選択だったと思います。自分の生まれた国と世界をよりよく理解するために、誰でも若いうちに海外に住む経験をした方がいいと思うようになってきました。ずっと抱えてきた当たり前の概念を再考察し、よりオープンマインドで考えるようになりました。その上、割とシャイで内気だった自分がもっと自由に他人と関われるようになりました。そして何よりも、置かれた状況がどれだけ難しくても自分でどうにか解決できる自信がついてきました。日本に暮らして合計5年間以上経って、満足できる20代前半を過ごせたと思います。
学生として東京で過ごした時間が比較的に長く、素敵な出会いに彩られました。多様な人々に出会い、少しずつ自分の世界が広がり、日本について持っていたイメージが変わりました。フランスで「日本ってどんなところ?」と聞いてみたら様々な偏見的な答えをもらえます。例をいくつか挙げてみると:「仕事に励む国だ。」や「日本にゴミ箱がないのに外にゴミがないと聞きました。素敵。」、または「日本の人は他人を必ず尊敬する優しい文化を持つ。」などがあります。その偏見が完全に間違えていなくても、空想の部分もあります。
フランスで日本について持っているイメージはメディアなどに影響されました。そのメディアの一つはアメリー・ノトン氏の『畏れ慄いて』という書籍になります。ベルギー人のアメリーは日本の大手会社に勤めて辛い目にあった話を自伝のフォーマットで書く本です。『畏れ慄いて』はとても人気を集まり、日本の労働環境について激しいイメージが広がり、日本で話題となった「過労死」に注目ができてそのイメージがさらに固まりました。しかし、日本に来てから多くの人に「仕事を効果的に終わらせるよりは、仕事に励む印象を与えるために長い時間をオフィスで過ごすことが評価されることもある」とよく聞き、少しイメージが変わりました。さらに、2013年にOECDによって作られた世界ランキングをみると、1年間で最も長い労働時間を過ごす国はメキシコで、日本は11位に至りました(日本に非正規雇用の割合が高く、そのランキングの正確度が批判されていますが)。しかし、自分が東京で正社員として働いた経験から話すと、すべての社員が夜遅くまで励む訳ではなくても、やはり労働環境と制度は厳しく感じました。フランスの「生きるために働く」文化とコントラストし、働くために生きる数年間でした。
日本旅行から戻ったフランス人から、日本にゴミ箱がなくて困った話をよく聞きます。その話になると必ず次に「なのに道が綺麗!」と言われます。私も日本に住んで最初の数年間「民度の低いポイ捨てをする人、一人もいないの?」と驚きました。しかし一年前自転車を購入して、定期的にかごにゴミが入った状態を見つけて、イメージが少し変わりました。「ポイ捨てをする人がいないのではなくて、ポイ捨てするゴミを見えるところに置かないだけだ」と思い、ゴミクリーンアップイベントにボランティアし林に入ったゴミや家の壁の上に置かれる空き缶を少しずつ見えるようになりました。近年フランスで環境意識が高まりポイ捨てが問題視されているため、「日本はフランスより上手くポイ捨ての問題を抑えている」と印象ができて、日本を訪れるフランス人観光客が理想的なイメージを抱いてしまいます。
日本の尊敬を重んじる文化のイメージがフランスに伝わった特定なメディアやイベントが特に思いつかなくても、とても強く連携しています。観光客として日本を訪れると、観光地やレストランで丁寧なおもてなしを受けて、皆がお互いを尊敬しハーモニーで暮らす社会にいる印象を受ける。私もこの印象を受け、今でもそう思います。しかし、日本で様々なバイトや仕事をし、その丁寧な対応の反面を経験もできました。周りの社会の態度が丁寧になると確かに暮らしやすいが、いざ社会人になり「受ける立場」から「提供する立場」に移ってみると、周りの人の態度が逆転します。仕事中は、自分の個性が控えめになり、お客様(神様)に対するサービス提供者としての役割が強調される印象もよくありました。しかし上司によって仕事の感覚が多く異なり、いつかフランスか日本で部下がいれば快適な労働環境を作る大切さを心がけるようにします。
日本に住んで今5年間以上経っています。来る前に思い描いた理想の国ではなくても、とても愛しい思い出しか残っていません。フランス以外何も知らない昔の自分より、高い山に立ったり深い谷に落ちたりし、とてもカラーフルな時間を過ごしました。となりの芝生は青く見えるが、完璧な場所がなく、周りに支えてくれる人々がいるからいる場所が暮らしやすいのだと今まで様々な場所に住んで思いました。
ここ5年間、私が抱いていた日本のイメージが変わりましたが、フランスが海外で持っているイメージも私の思った通りではないことにも気づきました。日本で私はフランス人として自己紹介をすると、案の定ファッションや料理についてコメントされることが多いです。しかし、教育レベルが高い人からでも時々驚くコメントもいただきます。例を挙げてみると:「フランス人はシャワーを浴びないで、匂いを隠すために香水を使っています。」または「フランスでは水道水は飲めない。」などと聞きました。300年前遡ったら、その情報は正しいです。ルイ14世の時代では停滞水から水が危ないと思われ、飲むことや浸かることを避けるのが常識でした。体の衛生を保つためには香水のついたタオルで体を洗うのが定番でした。その習慣からフランス人はシャワーを浴びないイメージが生まれましたが、元時代では一日一回は定番で、香水はアクセサリーのようなものです。水道水も無論飲めます。
留学をして視野が広がりました。しかし、生まれてきた国の視点から考え方を移行することの難しさにも気づきました。数年間日本に住んで、最初はハネ―ムーンフェーズで新しいものをありのままで捉えていたのですが、生活に慣れて目新しさがなくなったら、やはり育った環境に似た考え方に戻ってしまいます。所詮新しい環境に置かれて長く幸せに住めるようにできるのは、最初引かれたところではなく、巡り会った趣味と人だと感じました。
大学と一緒に行った奄美大島。ずっと行ってみたくて、想像していた自然豊富な天国でした。
沖縄でダイビング免許の研修の際に撮った写真。亀とサンゴに囲まれて完璧な一時間でした。
息苦しい街から出て自然に囲まれて一息できた真夏の日。