奨学生 レポート

外国人奨学生の顔写真

胡 佳融(フ ジャロン)
中国出身/2023~2024年度奨学生
上智大学 地球環境学研究科 博士後期課程

①来日して、最も感動したことと不思議におもったこと

 今年で日本での留学生活が8年目になりました。日本への留学を通じて、数多くの感動と不思議な出来事に出会うことができました。この留学生活は、私の人生における貴重な経験であり、新たな視点を開く機会となりました。今回は、留学中に最も感動したことと不思議に思ったことについて綴りたいと思います。

 私の日本での最初の印象は、2016年9月の大学入学前に降り立った福岡空港から始まりました。当時18歳の私は、初めての日本訪問であり、しかも日本語を話すこともできなかったので、故郷から約一時間半のフライトの中で緊張や不安しか感じませんでした。しかし、空港の出入国審査や荷物受取場で、陌生の日本人からの歓迎と助けを受けました。彼らの親切な対応は、私にとって心の支えとなり、異国の地での最初のステップを安心して踏み出すことができました。その後も、留学生活の中で何度も日本人のおもてなしを受ける機会がありました。地元の方々が道案内をしてくれたり、学校の先生やクラスメートが私に日本文化や言語、マナーを教えてくれたりと、日本人の温かい心遣いに触れることができました。彼らの気配りと思いやりは、私の心に深い感動と感謝の気持ちを抱かせました。これらの経験から、私は人とのつながりや思いやりの大切さを再認識しました。異なる文化や言語を持つ人々がお互いを尊重し、助け合うことで、より豊かな人間関係が築かれることを実感しました。日本のおもてなしの心は、私にとって忘れられない思い出となり、人生における貴重な宝物となっています。これらの年月の中で、私は日本から受けたおもてなしの精神に深い感銘を受け、自分も他人を助けるために積極的に行動するようになりました。地域交流のボランティア活動や、参加予定の2024年東京マラソンのボランティアなど、様々な活動に参加し、社会貢献の一翼を担うことができることを誇りに思っています。

 また、日本の文化や風習には不思議な魅力もあります。その中でも、私が最も不思議に思ったことの一つが、日本の四季折々の風景や自然環境の美しさです。特に、桜の花が咲く春の季節は、日本中が一斉に美しいピンク色に染まり、その壮観な景色に心を奪われました。そして、秋には紅葉が美しい風景が広がり、四季の移り変わりに感動しました。日本の四季は、自然環境の美しさだけでなく、生活や文化の面でも多くの特徴を持っています。特に、日本人が季節ごとに楽しむ独自の食文化があります。例えば、各季節に特有の蔬菜や果物(春:たけのこ、いちご、わかめなど;夏:きゅうり、なす、タコなど;秋:さつまいも、ごぼう、なしなど;冬:ねぎ、ほうれん草、マグロなど)を楽しむことや、日本人が追求する「旬の味」は、私にとって以前考えたこともなかったものでした。私の祖国でも四季はありますが、温室栽培が盛んであり、日本への留学前は、季節ごとにどの農作物が収穫されるかについてはあまり関心がありませんでした。日本の四季が持つ美しさと生活の豊かさに触れることで、私の心に深い感動と喜びを与えてくれました。

 最後に、私は高校時代から日本の自然と都市環境に対する興味にあるため、日本で環境政策を学ぶことを決意し、留学する道を選択いたしました。留学中において、もちろん日本の環境政策は私に深い印象を与えました。今年、研究室のフィールドスタディーで訪問した北九州市にあるエコータウンや環境ミュージアムで紹介された日本のリサイクルに関する取り組みが、驚くべきものでした。特に、日本では、個々の市民が積極的にごみの分別に参加し、リサイクルとごみ削減への高い意識を持っていることが明らかとなりました。公共の場や学校において整備された分別容器が多く見られることからも、日本の人々が地球環境やSDGsに対する配慮を持ち、将来の世代に美しい環境を残すために積極的に努力していることが分かりました。特に嬉しいことに、留学生活の4年目に、私の故郷である上海が中国で初めてごみの分別制度を導入したことを知り、さらに、上海のごみ焼却施設が日本の先進技術も採用していることから、私も日中両国の環境研究と発展にさらに貢献したいと思いました。

 ところで、留学を通じて、日本の文化や風習、そして人々の心の豊かさに触れることができ、多くの感動と不思議な出来事に出会うことができました。これらの経験は、私の人生に新たな価値観をもたらし、豊かな経験となりました。今後も、日本とのつながりを大切にし、異文化の理解を深める努力を惜しまず、世界に広めていきたいと思います。

初めての海外学会への現地参加・発表

2023年11月・中国 上海
Global Cleaner Production Conference
初めての海外学会への現地参加・発表

博士後期課程初めてのフィールドスタディー

2024年2月・日本 北九州市(市民太陽光発電場)
博士後期課程初めてのフィールドスタディー

②奨学金によって果たせたこと

 坂口国際育英奨学金を受けて上智大学大学院博士後期課程で研究ができる1年は、私にとって大きな成長の機会でした。奨学金のおかげで、私の生活における経済的な不安を克服し、自信を取り戻すことができました。これにより、東京での生活において、アルバイトに頼る必要性が減り、学業や研究に専念することができました。特に、私の関心が市民の持続可能な行動に向けられているため、その研究に集中できたことは大きな成果でした。
 この1年間の成果として、私は国際学術誌に2本の論文を発表し、そのうちの1本は環境学のトップジャーナルであることを誇りに思います。さらに、研究室のメンバーと共に国内外の学会で発表したり、日本国内でのフィールドスタディーに参加したりと、充実した研究生活を送ることができました。研究に加えて、私は学校や学会、フィールドスタディーなどのイベントで、日本語、英語、中国語の翻訳・通訳者として活躍し、大学院に入学する外国人学生が円滑にコミュニケーションを取り、学習するのを手助けすることもできました。来年度は、私の博士後期課程が後半に入り、春休みから博士論文の内容を計画し、次の学術誌論文のデータ分析と執筆、投稿を続ける予定です。奨学金の支援に感謝し、これからも研究活動や学術的な成果を追求していきます。