奨学生 近況報告

日本人奨学生の顔写真

茶山 健太
2020~2023年度奨学生
オックスフォード大学 博士課程 地理環境学部

パリで『ユネスコ ユースフォーラム』へ参加

 自分が将来働きたいと思っているユネスコのイベントに日本のユース世代を代表して参加できたことは本当に何にも変え難い素晴らしい経験となりました。運営委員会の一員として活動させていただく中で、参加者ごとのモチベーションの度合いの違いに困惑したり、ユネスコ事務局とのコミュニケーションに苦慮するなどなかなか歯がゆい部分も多かったのですが、それも国際政治の一部だと思いますし、ポジティブな経験と捉えることができました。

ユネスコ ユースフォーラム


 世界各国の様々な分野で業績を残している参加者との会話は本当に刺激的でしたが、特に印象に残ったのは、アイスブレイキングで隣に座ったウクライナからの参加者との会話でした。学校の先生である彼の言葉の一つ一つは非常に重く、戦争の被害によりダムの決壊などの環境問題が起きている自分の国で、どうやって子供達に自分の周りの環境問題に意識を向けさせることができるのかという質問を突きつけられた時には、何とも答えることができませんでした。平和がある上で初めて環境保全が考慮できるようになるという現実を今一度理解すると共に、人の心の中に平和のとりでを築くユネスコの活動は環境問題について世界が一丸となって歩みを進めていくためにも必要不可欠なのだなということを強く感じさせられました。

ユネスコ ユースフォーラム_2


 ただ、ユース世代の発言力という意味では、ユネスコ総会に参加している各国の官僚や政治家の方々にとって、必要不可欠な意見だとは思われていないのだという厳しい現実を突きつけられたように感じました。13 回目となる今回のユースフォーラムは、前回と比べ二倍ほどの国からの参加者がいたことからも、形式的には若者の国際政治への参加の必要性が世界的に認識されていると感じられたのですが、実質的にはまだ参加賞止まり程度の認識なのかなとというのが正直な 感想でした。特に、各国のユース世代担当大臣とのディスカッションセッションでは、当初参加する予定だった大臣の三分の一ほどが欠席しており、我々の質問からの回答も事前に用意された回答を読むだけという対応が多く、多くの参加者から失望の声が聞かれました。ただやはりこのような現実を知ることができただけでも、参加した意味があったのかなと思います。

ユネスコ ユースフォーラム_3

 将来に向けては、ヨルダンからの参加者と共にヨルダンにある世界遺産・ペトラ遺跡を活用した環境教育プログラムを設立するプロジェクト考案しプロポーザル(提案書)を提出したところ、競争を勝ち抜き、ユネスコから資金・技術援助をいただけることとなりました。博士課程後に行うプロジェクトが一つできたこと、またユネスコと中長期的な関係性が作れたことは本当に今後への大きなステップなのではないかなと思っています。