奨学生 レポート

外国人奨学生の顔写真

楊 夢(ヨウ ユメ)
中国出身/2021~2022年度奨学生
日本女子大学 人間生活学研究科 博士後期課程

①自由と同調

 私は多くの留学生と同じ、日本に来る前に、日本に対して憧れを抱えていました。学部時代に「アニメ部」に通い、同士で一緒にアニメや漫画を見たり、ときにアニメコンベンションに参加し、コスプレの舞台劇をやったりすることもあります。そのために、朝早く起きて、化粧と服装、道具(キャラクターの武器など、もちろん偽物)の装着を済ませて電車やバスを乗って会場に行くことが多くあり、ときに、ほかの乗客の視線を感じて、「何、その人?」と、小さく、こっそりした喋る声も聞こえて、「やはりこんな姿は変な人と思われちゃう」と情けなく感じていました。しかし、日本のいろいろなビデオやVlogで、コスプレイヤーが堂々と街で歩く姿や、「綺麗な服装ですね」「写真撮っていい?」など、友好で話しかけてくる人々が見えます。あのときから、日本のアニメ文化や、日本社会がコスプレなどのサブカルチャーに対する受容度の高さに感動して、日本はみんなと異なるものに対しても優しい、自由の国だとイメージし、いずれ日本に行ったら、ガチなアニメ文化、環境を体験しようとも思いました。

 2018年、修士への進学をきっかけに、私は日本へ留学にきました。電車や街の中、コスプレやゴシック、カラフルな髪色、女装する男性、どんな姿をしている人でも、特に注目されてなく、自然に電車を乗って、自然に生活している様子に引かれ、私自身も、大好きなチャイナドレスをときどき着て日本語学校に通い、ほめる言葉ばかりをもらい、「ここでは自由に生活できる」と強く感じました。

チャイナドレスを着て学校へ

チャイナドレスを着て学校へ


 しかし、そんなに自由ではないと感じることも、ときどきあります。最初にそう感じたのは、大学院入試面接のために、スーツを買いに行った時です。たくさんなスーツの中、受験・就活フェアがあり、中に、すべでは黒いものです。私は、黒いスーツと保険セールスマンは常につながっているというイメージをもって(これはおそらく、一部中国人学生がもっているステレオタイプです)、真っ黒な服に対して少しいやな気持があるため、黒に近い灰色のものを選びました。少し不安があるので、店員さんに聞いたら、「みんなは黒なので、灰色のスーツを着ると目立つ可能性が高く、肩身が狭く感じてしまうかもしれない」という回答をもらい、驚きました。これはまさか、同調圧力というものでしょうか。その後また別のところで、この同調圧力を感じたこともあります。電車の中で、静かに化粧しているOLは、「ツっ」と、舌打ちされ、なぜだろうと私は疑惑を感じ、その後たまたま「迷惑行為」に関する論文を読んだときに、電車の中で化粧することも迷惑行為だという内容がありました。静かに、動きも小さければ、だれにも迷惑かけないのではないかと思い、ネットで調べれば、「外で化粧するなんか恥ずかしくないの?」「化粧品の匂いがきつい」などの答えが出てきました。しかし香水やシャンプー、夏はさらに、汗の匂いもする電車の中、なぜ化粧品だけの匂いが許されないでしょうか。「じゃ、匂いのない化粧品なら…」と考えましたが、そうではなかった気もします。「電車の中で化粧してはいけない」はやはり、日本社会の中で暗黙のルールのようなもので、これはまた、同調圧力なのでしょうかと、私は思いました。さらに調べれば、同調圧力というものは、悪い影響として、常にいじめにつながり、少数者は仲間外れされやすいとわかり、しかし自分は外国人なので、どうしても同調できない、その「空気」を読めないことが多く、自分はこれでいいのかなと、心配していました。

自由を感じながら、ときどきプレッシャーも感じるのはなぜでしょうか。最近授業で先生の話で分かるようになってきました。先生は日本が昔、閉鎖的で、「秩序」がかなり固く、「ダイバーシティ」などの今まで強調されていない概念はある日欧米からやってきて、日本は今や、その「外来物」を内在化しつつある時期であると教えました。そのために、両方の文化が社会の中で共存し、ときに矛盾が生じることもあります。私はすっきりしました。「同調」も「自由」も、社会文化の一部で、どちらが正しいという決まりがありません。少数者としての私は、強いて同調もしなく、過剰な自由も求めなく、「本心」を保て、他人に害しなければ、自分が納得できる生き方のままでいいです。


②試行の中で道を探す

 は日本に来てから、たくさんな支援をうけています。その中に、坂口財団の奨学生になることは大きな出来事です。いただいた応援は、研究を支援する奨学金はもちろん、いろいろなイベントの中で、音楽や日本の文化・芸術を体験し、『歌舞伎鑑賞教室』などで、日本文化への理解がさらに深くなりました。オンラインの交流会「ON2022」も大切な経験になり、皆さんとの交流の中で、新しい視点を学んで、今までの自分の研究や観点を反省し、コミュニケーション力も高められました。毎月の報告メールは、日本語文章作成の練習にもなり、文法の修正からコロナの対策まで、毎回アドバイスやコメントをいただき、生活や学修に、大きな支えになっています。
博士課程に入ってから、私は常に、「どんなものを研究したいか」と、自分に問います。しかし、答えするのは難しい。なぜなら、関心あるテーマがいっぱいあるからです。犯罪問題からはじめ、修士のときは親子関係と愛着の影響を検討しましたが、犯罪に影響する要素は、もっと多く、広く存在しています。自己統制力が低く、不快のことがあるとすぐ暴れる低自己統制説や、人の視点に立てられなく、自分の利益だけを重視して他人に傷つける共感低下説、認知の歪みがあり、自分の悪行を認識できない認知説など、私は現在、たくさんの学説から、価値がある点をたくさん掘り出し犯罪との関連性を探し出し、それぞれの観点の間、つながりも注目し、要素間の相互作用を探し出すことの面白さに没頭しています。「どんな」よりも、研究を広げ、たくさんの知識を学びながら、自分のたくさんの可能性を試行していくことは、現在の私にとって大切な研究課題、そして人生の課題でもあります。

 「これからどうする?」「博士課程後の計画は?」などの質問もよく聞かれています。私は、「就職する」や「○○歳前に○○になる」よりも、「探索しながらやっていく」という答えが好きです。人生は木のようにたくさんの「枝」があり、夢の実現も同じく、多くの選択肢と可能性があると思います。将来にも、一本道だけを見つめるのではなく、歩きながら、探索の中で夢を叶う道を探り、沢山の可能性の中で犯罪研究のために力を尽くそうと思います。