奨学生 レポート

外国人奨学生の顔写真

崔 恩瑛(チェ ウンヨン)
韓国出身/2021~2022年度奨学生
上智大学 文学研究科 博士後期課程

①見えなかった日本 ― 最終レポート

 日本に来て12年です。
311地震も経験し、日韓、日中の外交トラブル、ヘイトスピーチなど、日本の社会で大きい変動と外国人の排斥する運動を目にしながらも日本に残り、12年を日本で過ごしたこと、これからも定住していく計画をしていることは、「それ」が日本の全部ではないと信じきっているからでした。

 中国で学校を通う時に学校教科書に書かれた日本と、韓国の新聞メディアが述べている日本、住んでみて見える日本はどうしても全く違うものにしか思えません。振りかえてみれば、自分が生まれた中国東北は、過去満州国があった地域の関係もあって、教育的には他地域よりも確固な反資本主義思想の授業が多く、強制的に戦争映画の鑑賞など決められ、小学校以前から敵対思想を育てていたようです。韓国はアジアでメディア自由度が高いと思われますが、それは近20年前後の話で、日本の極保守の番組、ニュースの放送に関しての討論が多くて本当の日本を知るにはメディアだけでは不足していました。

 日本に住んでからと言って日本についてよく分かるかといえば、そうでもないのが、インターネットで見るのは自分の母語のもののため、長い時間歪んだ目で日本を見ていました。 本当の違いは、自分で経験して感じて、さらに長い時間の積み重ねが必要のようです。迷子になった日本語も知らない外国人を1時間半もかけて、道を案内してくれたり、現金が入った財布をなくしてもそのまま戻る、地震後も被害を受けた住民に食糧を配っても、一列にならんで待つ、コロナに外国人を含めた住民全員に支援金を配る。。。

ニュースでは日本が先進国を脱落を目前にしていると言っても、一個ずつの事例は違うことを言っています。 去年、教授のお手伝いで日中韓制作者フォーラムに参加してからもっとそう思うようになりました。このフォーラム自体が日中韓の3カ国は近いながらも外交的に最もトラブルを起こしやすく、政府を監視する、国民との距離が近いメディアの製作陣との距離を政治とは関係なく維持し、距離を保つという、日本政府の意志があったからこそ20年以上続けられていることを知りました。

政府の立場では外交的にすべきことがあっても、挽回ができる余地を残すことで、メディアも政府も柔軟な対応ができるよう滑り止めを作っていたことは、非常に興味深いことでした。

最近になってからこそ、気づいたことですが、相手の言っていることより、相手の行動を注目すべきということです。

2022年12月 日韓中テレビ制作者フォーラムに参加(画面一番左上)

2022年12月 日韓中テレビ制作者フォーラムに参加(画面一番左上)

引用:https://www.atp.or.jp/overseas/jkc-forum.php


②奨学生期間中にできたこと・将来の計画

 感謝 : まず、この2年間奨学金をいただき本当にありがとうございます。

 自分にとって学業と生活を両立することはいつも難題であって、自分の将来よりは来月の生活のために心配するのが留学生活でした。 韓国で仕事をして、初期の何年間はその貯金を使いましたが、その後は貯金も底が見え、両親も定年が近く支援してくれるのが難しくなっていました。

 さらに、計画にもなかった、コロナ禍が始まり、アルバイトが継続できず、非常に大変な時期に坂口財団に出会いました。 奨学生期間中に何ができたかというとコロナ以前と同様な生活が出来ました。 学業が継続にできましたし、休学して再挑戦も考えた、博士後期への進学も出来ました。また、研究所に入り教授の研究のお手伝いに加え、日中韓制作者フォーラムのような政府が運営するフォーラムの進行委員として参加ができ、3カ国テレビ制作者間の交流を促進する歯車の役をいたしました。全てが、財団からの支援があったから出来ました。

 将来的には、博士号を取得して、実力を伸ばして大学で授業をすること、また、過去にも申し上げたように、最終的に非営利団体を立ち上げることを考えていますので、積極的なボランティア活動参加を通じて経験値を上げていきたく思えます。