奨学生 レポート

外国人奨学生の顔写真

グエン イニィ
ベトナム出身/2021~2022年度奨学生
麗澤大学 外国語学部外国語学科

①ベトナムと日本の関係について

 1973年、パリのベトナム民主共和国総代表部にて、日本国政府とベトナム民主共和国の代表が外交関係樹立に係る交換公文に署名しました。そして今年(2023年)は外交関係樹立50周年を迎えることになり、「無限の可能性を秘める」といわれる両国の関係は多くの分野において深まっていきました。現在、ベトナムと日本の関係は非常に強いものとなっています。日本はベトナムにとって最大のODA(政府開発援助)提供国です。一方、ベトナムは日本企業にとって重要な市場の一つであり、多くの日本企業がベトナムに進出しています。

 春休みにベトナムの最も大きな都市のホーチミン市に旅行しました。ホーチミン市で最も大きいモールは高島屋とAEONです。また、セブンイレブン、ファミリーマートなどのコンビニやうどん、寿司、ラーメンなど日本の店もたくさんあり、とても驚きました。日本の投資によってベトナムの経済成長が加速し、多くの雇用機会ができていると感じられました。 2022年10月時点では、日本における外国籍労働者の中でベトナムの労働者数が最も多く、その数は約46万人になります。さらに、ベトナム人留学生も増加し、日本とベトナムの交流がさらに深まりました。

2022年10月 日本ベトナム教育・文化交流会の集合写真。前列・後列に分かれ、笑顔で並んでいる。

2022年10月 日本ベトナム教育・文化交流会に参加(後列一番右)


 ベトナムから来日し、日本の大学で日本の文化や言語について学びました。この経験を通して、私はベトナムと日本の文化の違いや共通点を理解し、互いに理解し合うことの重要性を学びました。ベトナムと日本は、歴史的にも経済的にも密接な関係を持っています。しかし、この関係はまだ改善の余地があります。日本人の多くはベトナムについて誤解を持っています。例えば、「ベトナムは貧しい国だ」という誤解がありますが、現在のベトナムはGDPが急速に伸び、アジアで最も急速に成長する経済国の一つとなっています。今後日本人とベトナム人が互いの理解を深めることで、ビジネスや文化交流の機会が増え、より良い関係を築くことができるでしょう。文化交流は、ベトナムと日本の関係をより深めるために重要な役割を果たすと思います。しかし、現在のままではまだ不十分です。私はベトナムと日本の交流を促進するために、以下の取り組みを実施したいと思います。

・ベトナムのお茶とコーヒー文化に関するイベントの開催
・ベトナムと日本のお正月に関する体験会
・ベトナムと日本の若者を対象とした交流プログラムの実施
・ベトナムと日本の若者を対象としたスポーツイベント

2022年10月 日本ベトナム教育・文化交流会では司会も担当

2022年10月 日本ベトナム教育・文化交流会では司会も担当


 ベトナムと日本は、安全保障、経済、文化交流などにおいて外交関係を深め、お互いに大きな利益を得てきました。これらの取り組みにより、ベトナムと日本の若者が相互理解を深め、より良い関係構築につながるでしょう。私自身も日本での学びや経験をベトナムに還元するなど、両国の架け橋となることで貢献したいと考えています。先述したような取り組みが進むことで、より良い未来を築くことができると信じています。


2023年1月 在日ベトナム学生青年協会開催「TET VYSA 2023」に参加 (後列右から5番目)

2023年1月 在日ベトナム学生青年協会開催「TET VYSA 2023」に参加 (後列右から5番目)


②奨学生期間中にできたこと・将来の計画

 坂口国際育英奨学財団からの奨学金により学習や研究に専念できる時間が増えました。私の卒業論文のテーマは「ベトナムにおける高齢者介護の家族役割」です。ベトナムにおける高齢者介護に対する家族の役割について論じました。高齢化が進むベトナムでは、社会的な支援体制づくりに時間がかかるという問題を抱えています。本論文の主旨は、ベトナムの高齢者介護において、家族の役割がまだ大きく占めることを明らかにし、今後ベトナムの親子関係または高齢者介護の家族役割がどのように変化するのかを予測することです。本論文を作成する中で、高齢者介護に対する家族の役割についてベトナムの若者に40代未満のベトナム人149人を対象にアンケート調査を行いました。このアンケートからベトナムの若者における高齢介護について3つの特徴があることに気づきました。1つめは「高齢者介護における家族役割の意識が強い」、2つめは「高齢者介護施設の需要が高まるが、対応できる施設が足りない」、そして3つめは「親密な親子関係が形成されているため、両親の介護は両親への恩返しという気持ちが強い」ということです。核家族の発展とともに単身世帯や高齢者世帯が増加するベトナムにおいて、今後施設介護が充実すれば、その利用者が増えると予測します。それとともに、高齢者介護に対する社会的役割が大きくなり、家族の役割意識は徐々に軽減されると考えます。しかし、両親の世話をすることが「恩返し」であるという若者世代の気持ちはいまだに強いので、老人ホームや介護施設に依頼するより、在宅でのサービスを使用する傾向が増えると思われます。

2023年2月 ゼミの代表として卒論コンテストに参加、佳作に入賞

2023年2月 ゼミの代表として卒論コンテストに参加、佳作に入賞


 本論文を書くことで、高齢者の問題やベトナムのことをより理解できるようになりました。私は一人子なので、将来両親が高齢者となった時は、ベトナムに帰って介護しようと思っています。そのためより良い在宅介護サービスが利用できることを期待しています。

 一方、課外活動として在日ベトナム学生青年協会にて様々なボランディア活動を行いました。ベトナムと日本の文化交流活動や在日ベトナム学生に向けのイベントなどを実施しました。この2年間で、国際関係の仕事をしていくためのコミュニケーション能力、協調性、発信力を身につけることができました。また、ベトナム大使館でのボランティア活動を通して、将来ベトナムの外務省で働きたいという気持ちも強くなりました。

 この先の進路は大学院を検討しています。大学院でも異文化に触れることで自分の視野を広げ、多様な人々と交流できることを期待しています。大学院を卒業した後、日本の企業に就職し、2、3年間働いた後、ベトナムと日本の架け橋としてベトナム外務省で活躍していきたいと考えております。目標を叶えるために、コミュニケーション力、様々な思考力、リーダーシップ、自分の専門分野について能力を養っていきます。そのため今後も自己研鑽に励んでいきたいと考えております。