奨学生 レポート

外国人奨学生の顔写真

ヴ ・ドゥク ・マイン
ベトナム出身/2024年度奨学生
上智大学 経済学部

留学生として見た日本のコンビニで働く体験

 私が日本に来てからの5年半、自立を目指して様々なアルバイト1を経験してきました。中でもコンビニでのアルバイトは、私にとって日本の文化を学び、言語能力を磨き、人々との交流を深める場となりました。

 特に、ある日、店内が忙しい時に、高齢の日本人女性が店に入ってきました。彼女は少し困惑しながらも2、私が丁寧に商品を説明すると、とても感謝していました。この出来事は、私にとって単なる商品の説明以上の意味を持ちます。言葉を超えた心の通い合いがそこにあり、私の日本語が自然と向上していく過程を実感しました。また、その女性とのやり取りから、私は人として成長している3ことを感じることができたのです。

アルバイトをしたコンビニ

アルバイトをしたコンビニ


 コンビニでの仕事は、単調で退屈だと思われがちですが、実際にはお客様一人ひとりとの関係を築くこと、短い時間の中で最高のサービスを提供することは、非常に挑戦的です。特に取り組んでいたのは、お客様との対応です。例えば、お客様がマイバッグを持っていたときは、「袋に入れましょうか?」と声をかけ、会計の最後には必ず「またお越しをお待ちしております」と言って笑顔を忘れません。これらの経験から、どんな仕事であっても、真剣に取り組むことが如何に大切かを学びました。その姿勢がお客様に伝わり、彼らが再び私の働く店を訪れる理由の一つになっていると感じます。

 また、異文化の中で働くことは、時には誤解や衝突を生じさせることもありますが4、それによってお互いの文化をより深く理解することができます。日本の労働環境は、効率性と礼儀正しさを重んじる点で、私の成長に大きな影響を与えました。また、コンビニでの経験は、日本社会の多様性と寛容さを感じる場ともなりました。5

 私のアルバイト経験は、単に生活費を稼ぐためだけではなく、自己成長という貴重な資産を私に与えてくれました。これからもこの経験を活かして、どんな挑戦にも前向きに取り組み続けていきたいと思います。そして、これらの体験が将来、どのように私のキャリアに役立つか楽しみにしています。



【エッセイに関する事務局とのやりとり】

Q1 :「様々なアルバイト」とは具体的に? ほかのコンビニも含め?

A : 日本に来てから、カレーハウス、居酒屋、スーパーマーケット、サイゼリヤ、そしてコンビニ(2店舗)でアルバイトを経験しました。

Q2 :「彼女は少し困惑しながらも」というのは、彼女は何に困惑していたのですか?欲しい商品が見つからなかったから?それとも店員が日本人らしくなかったから?

A : その日、高齢の女性が店内で欲しい商品を見つけられずに困惑していました。コンビニは商品の種類が多く、限られたスペースに効率よく配置されているため、時にはお客様が欲しい商品を見つけるのが難しい場合があります。

Q3 :「私は人として成長している」というのは、もう少し具体的に言うと?つまり、女性との会話で彼女が自分のことを信頼していることが感じられ、かつては自信が持てなかったコンビニでの仕事や接客に充実感を覚えた、といった感じですか?

A : コンビニで働くのは、客さんとの接客が多いというイメージが多いですが、実際に接客するときは、レジで以外はほとんどありません。そのため、この仕事を通じて、お客様が困っている際に適切なアシスタンスを提供することができた時、感謝の言葉をいただくことは非常に嬉しかったです。これらの小さながらも意味のある交流が、以前は不安だった接客業務に自信と充実感を持って取り組むきっかけとなりました。

Q4 : 「時には誤解や衝突を生じさせることもありますが」というのは、中には、首になりそうだったり、辞めたくなるほどのこと、何日もその体験を引きずっていたといったような深刻なものもありましたか?それとも、それほどではなく、コンビニの店員であれば皆が体験するような「困った客」の対応といったものでしたか?つまり、小生はその深刻度に興味を持ったわけです。ただ、そうしたことは不愉快な体験として思い出したくないということであれば、どうぞ、遠慮なく固辞してください。

A : ご興味を持っていただきありがとうございます。
実際に私が体験したわけではありませんが、同僚が客との激しい口論の末、仕事を辞めることになったことがあります。この同僚は通常、親しみやすくユーモアのある人ですが、厳しい客の非難により心を痛め、退職を決意しました。
その理由は、彼はレジでお客さんに対応するとき、完璧ではなくても認められるレベルですが、その客が非常に厳しくて文句を言ってしまって、喧嘩になってしまいました。例えば、商品を優しく置く必要があり、お客さんに渡すとき、ちゃんと両手で渡して、お辞儀することも必要があるようです。
このような経験は、店員にとって大きなストレスとなり得ると思います。

Q5 : 「日本社会の多様性と寛容さを感じる場ともなりました。」というのを、もう少し具体的に。

A : 私が働くコンビニでは、多様な国籍の人々が協力しながら働いています。この環境は、互いの文化を尊重し合い、支援し合うことの重要性を教えてくれました。たとえば、イスラム教に従う人がいて、一日5回祈らないといけないため、働いている間でも、彼を祈らせる必要があり、その際、自分が店を運営しなければならないことがあります。時には、急に店が忙しくなり、困ることもありますが、彼らの文化を尊重する必要があると考えているため、特に不満はありませんでした。
また、お客様からのさまざまな反応も、社会の寛容さを感じさせる瞬間です。今まで、コンビニで働く時間が一番長いですが、時々、作業を忘れてお客さんを待たせてしまうことがあります。その時、焦ってさらにミスをしてしまうこともあります。しかし、ほとんどの場合、お客さんが待ってくれて、彼らが急いでいる時でも、寛容で許してくれて、非常に感謝しています。多分どんな仕事でも、特にサービス業界ではミスをするのは避けられないことでありこのような寛容さは自分が向上させることをもっと意識して,改善することにつながると思います。

Q6 : その他の質問として、マインさんが勤務しているコンビニは、大体、全部でマインさんを含め何人くらいの店員がいて、通常、その内の何人が常駐し、その内の何人が正社員で、何人が外国人で、どんな国籍の方々ですか?

A : 現在の店舗では、約20〜25人のスタッフが働いており、その中には4人の正社員と、ベトナム人、ミャンマー人、ウズベキスタン人を含む多国籍のパートタイムスタッフが半数近くを占めています。1日時間帯によって、店にいる人数が違います。例えば朝は5人、昼は6〜7人、夜は3〜4人、深夜は2〜3人が勤務しています。