2019年6月16日 歌舞伎鑑賞教室(国立劇場 大劇場)
梅雨の合間の夏日、独立行政法人 日本芸術文化振興会主催の「歌舞伎鑑賞教室」に参加してまいりました。
解説「歌舞伎のみかた」は、若手歌舞伎俳優・中村虎之介さんの登場で始まりました。最新ハリウッド映画のBGMやダイナミックな舞台装置の動き、400年の歴史ある歌舞伎の世界の分かりやすい解説、SNS掲載向けの1分限りの撮影タイム等の演出に、初めての歌舞伎鑑賞となる奨学生も一気に引き込まれた様子でした。
その後上演されたのは『神霊矢口渡』です。江戸の才人として有名な平賀源内が福内鬼外というペンネームで、軍記物語『太平記』を題材に書いた演目でした。
奨学生の感想
鑑賞前に抱いていた「外国人の自分には難しいのではないか」というイメージが、「歌舞伎のみかた」で覆り、『神霊矢口渡』の鑑賞で役者など歌舞伎に関わる方々のプロの技巧に感銘を受けた、という熱のこもった感想が多く集まりました。
その中から、今回は2名の力作の感想文を下記に全文掲載いたします。是非ご覧ください!
演目『神霊矢口渡』について
ときは南北朝時代。主人公 新田義峰は兄(義興)が最期を迎えた矢口の渡しで、渡し守(頓兵衛)の家に一夜の宿を求めます。応対した娘(お舟)は義峰に一目で恋に落ちてしまいますが、お舟の父親である頓兵衛こそが義興を追い詰めた一味の1人でした。お舟は義峰に恋人(うてな)がいると分かってもなお、義峰への恋心と父への孝行心で思い悩みます。
結局、お舟は義峰の身代わりとなり、傷を負いながらも義峰を逃すため、村の包囲網を解くための太鼓を打ち鳴らします。この場面で、人形浄瑠璃の人形のように演じる”人形振り”の演出が45年ぶり取り入れられました。人間らしくない、その瞬き一つしない演技は、むしろお舟の強く一途な感情を浮かび上がらせ、観客一同その気迫に圧倒されました。
(参考文献:独立行政法人日本芸術文化振興会 第九五回歌舞伎鑑賞教室 神霊矢口渡 パンフレット)