
花岡 成有
2025~2027年度奨学生
オックスフォード大学 博士課程 政治国際関係学部
西アフリカ3ヵ国の国会傍聴ルポ
本年11月のジョージア州アトランタで行われたアメリカ・アフリカ学会に参加の後、西アフリカに移動し、トーゴ、ベナンという隣り合う3つの国でデータ収集、リサーチアシスタントや現地ジャーナリストとの面会などを行いました。さらに、博士論文とは直接的に関係しませんが、ガーナとトーゴの国会で議会の様子を傍聴しました。この経験はとても興味深いものでしたので、ここで少し記載させていただきます。
ガーナの国会は首都アクラ南部の地区に位置しており、この建物は1970年代から使用されています。訪問者はまずビジターセンターで登録を行い、手荷物検査を受ける必要があります。議会のセッションの開始は建物内のベルで通知され、傍聴者は議会の2階部分に200席ほどある傍聴席から本会議や委員会の様子を見学することができます。私が傍聴した際には、4つの小学校から多くの生徒たちが、見学に訪れていました。議会の職員の方々が、生徒たちに議会の基本的な規則、金色の杖とスツールという議会のシンボル、議長と2人の副議長の名前とその称号、書記の役割、多数派と少数派の政党名と議席数について説明をしていました。議会の職員の質問に対し、生徒たちは比較的正しい答えを回答しており、感心させられました。議会の議論は非常に白熱し、少数派(野党)のリーダーは議長から何度か発言規則を守るよう注意を受けていました。約2時間の議論の後、議員たちは「賛成」・「反対」を投票し、法案は多数決で可決されました。


写真:ガーナの国会
ガーナの隣国、トーゴの国民議会は、ガーナとは大きく異なる政治文化を反映しているように思われました。首都ロメの北部地区にある議会議事堂は、中国によって数年前に建設された巨大な建物です。議会の議事を見学するには、事前にメールを送り、事務局の書記長の許可を得る必要があります。一般公開席はなく、訪問者がいる場合には、議員席の後方に用意された事務方と同じ席に座ります。しかし、議会の職員によれば、一般市民が議事を見学することは非常に稀だそうです。私が傍聴に訪れた日は、トーゴの国家元首である閣僚委員会委員長が上院議員と下院議員を前に議会で演説を行いましたが、与党、野党を問わず、すべての議員は、国旗をあしらった肩掛けを身につけ、静粛に演説を聞いている様子が印象に残りました。元首の到着を前に、議会の建物前では、多くの女性たちが国家元首を歓迎する踊りを踊っていました。元首が与党や野党といった各種の政党勢力を超越した存在であるという印象を受けました。


写真:トーゴの国会
もちろん、国会の様子は政治文化のほんの一端であり、政治体制の違いの原因や結果ということはできません。しかし、ガーナが二大政党制のもとでアフリカの民主主義のモデルとみなされているのに対し、トーゴは1960年代末から大統領一家が支配する非常に権威主義的な政権である(現在の国家元首は1969年から2005年まで政権を握った先代の大統領の息子)という違いは、両国の国会の様子にも表れているように感じました。ガーナの国会が多くの傍聴席を持ち、小学生も見学に訪れるような開かれた議会であるのに対し、トーゴの国会はそもそも市民の傍聴は想定されていません。また、与野党の活発な議論も、トーゴではガーナのように感じられませんでした。また、議会の形状も、ガーナは写真のように円形で与野党が左右に対峙するのに対し、トーゴの場合には大きな会議場のような形状になっており、議論の場で相対するというイメージがつきにくいものでした。
議会の外においても、ガーナではクワメ・ンクルマ初代大統領の博物館に小学生の団体がいくつも遠足で訪れており、書店では多くの著者がガーナの政治について執筆しています。一方、トーゴ(フランス語圏アフリカ全体の傾向でもあるようです)では、エリート層は現地ではなくパリで書籍を出版する傾向が強く、書店の棚には自国の政治情勢に関する書籍は見当たりませんでした。実は、その隣のベナンも、長く民主主義的な国として知られていましたが、現大統領が就任した2016年以降は民主主義の後退が指摘され、政敵の徹底排除など、権威主義的な傾向が強まっていました(そして12月7日のクーデター未遂に至ります)。こちらの国会も傍聴には国会議長に書面で要望書を提出する必要があるなど、市民に広く開かれているとは言えませんでした。民主的な政治文化を育み、また維持していくためには、市民の政治教育と表現の自由が非常に重要だと感じさせられた出来事でした。
